企業の環境への取り組みについては、指標としてISO14000シリーズをはじめ、「環境パフォーマンス指標」などがあり、これらに基づいた環境管理を行い、環境報告書等を作成する企業も急速に増加してきている。 そして、この環境への取り組みを評価するための環境格付けを行う動きが世界で活発になってきており、国内では日本経済新聞社の「環境経営度評価」、環境経営格付機構の「環境経営格付け評価」、また欧米ではイノベスト社、ダウジョーンズ社などで環境格付けが行われている。しかし、これらの格付けは、企業の環境への取り組みの一部しか見ていない傾向にあり、必ずしも総合的な評価を行っているとは言えない。 このため、平成14年度から本研究を開始し、14年度は、既存の環境パフォーマンス評価基準の洗い出し及び比較を行い、共通項目及びそれぞれに特異な項目の分析を実施し、総合的な評価のあり方に向けた検討を行った。 15年度は、14年度の検討内容を踏まえ、日本企業の大多数を構成する中小企業が環境対策を積極的に推進するための施策について検討を行った。 本研究では、当初、公平な評価ができるような基準の作成を目指したが、企業規模・職種等によって評価項目が異なること、またステークホルダーによっても要求項目が異なることから、非常に困難な作業になることが予想されたため、検討方針を上記内容に変更した。検討を進めていく中で、現状の「環境パフォーマンス指標」、「環境報告書ガイドライン」等の課題が明らかになったほか、実際の企業の取り組みを聞くことによって、中小企業へ広げていくための課題も明らかになった。解決策としては、ガイドライン等をより使いやすいものに見直すこと、また、環境先進企業がその取り組みについて中小企業に積極的にPRすることが必要であり、環境対策の内容及びかかるコスト、さらには環境対策を行うことによるメリットを、中小企業をはじめとする各企業に幅広く認識させることが必要である。本報告書は、これらの課題について、委員長はじめ各委員の方々が、それぞれの立場で解決の導くための考え方をまとめたものである。本研究の成果が、中小企業をはじめとした各企業が、環境対策に積極的に取り組んでいくためのきっかけとなれば幸甚である。 |
研究委員会名簿 (敬称略、委員は五十音順) |
委員長 | 石谷 久 | 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 | ||
委員 | 青木 修三 | 環境経営学会 理事 | ||
國友 宏俊 | 経済産業省 産業技術環境局 環境調和型産業推進室 室長 | |||
古室 正充 | (株)トーマツ環境品質研究所 社長 | |||
中村 義人 | あずさ監査法人 環境マネジメント部 部長 | |||
山口 光恒 | 慶應義塾大学 経済学部 教授 | |||
横山 宏 | (株)日立製作所 研究開発本部 主管技師長 | |||
事務局 | 木村 耕太郎 | (財)地球産業文化研究所専務理事 | ||
本根 正三郎 | (財)地球産業文化研究所理事・事務局長 | |||
小田原 博史 | (財)地球産業文化研究所地球環境対策部長 | |||
阿知波 雅宏 | (財)地球産業文化研究所地球環境対策部 課長 | |||
(平成16年3月現在) |
はじめに |
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研究委員会名簿 | |
目次 | |
1. | 委員長雑感《石谷委員長》 |
2. | 企業振興の課題と環境格付け《横山委員》 |
3. | 地球環境問題と企業経営-チャンスとリスク-《山口委員》 |
4. | 新たな環境経営格付けへの挑戦《青木委員》 |
5. | 環境会計の課題について -経営ツールとしての環境会計の活用に向けて-《古室委員》 |
6. | マテリアルフローコスト会計 -環境管理会計としての意味と導入過程-《中村委員》 |
7. | 環境経営のための環境会計 -キヤノンにおける環境経営とマテリアルフローコスト会計の導入- 《キヤノン(株) 安城講師》 |
8. | 中小企業の環境対策推進ドライブとなる「企業の環境パフォーマンス評価のあり方 について《事務局》 |
<参考資料> |
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1. | 各種評価機関等一覧表 |
2. | 環境パフォーマンス関連用語集 |
(文責 阿知波雅宏) |